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[音楽] 堀込泰行「HIGH&LOW」を考察していたら歌詞に共感した話

秋です。

秋は、アコースティックギターが最も似合う季節だと思うわけですが、
そんなアコースティックな季節に、敬愛するシンガーソングライターの新曲を1つ、ご紹介します。

1998年に兄弟デュオとしてメジャーデビュー後、2013年に脱退し、現在はソロで活動されている堀込泰行さん。
そんな彼が、今年10月にニューアルバム「What A Wonderful World」を発売されました。

その中に収録されている楽曲 「HIGH & LOW」 について、書こうと思います。

(試聴)

このアルバム自体は、1曲目であり、蔦谷好位置氏がプロデュースを務め、のんさんが主演のPVがある
「WHAT A BEAUTIFUL NIGHT」が、どうしてもスポットライトが当たりがちなアルバムではあります。

が、しかし、私はこのアルバムを一聴したその時から、どうしてもこの 「HIGH & LOW」 という曲が、頭の片隅に残り続けているのです。

そもそも、この堀込泰行さんというアーティストは、生粋のシンガーソングライターそのものであり、楽曲でも、歌詞でも、歌声でも、聴く人を魅了してくれる方でございます。

よって、堀込泰行氏の作る曲は「楽曲」と「歌詞」の両側面でかなり楽しむことができるわけです。
(いや、そんなのどのアーティストさんも割とそうでしょ)となるところですが、この堀込泰行氏は、やっさんは、本当にそこの観点が味わい深いのです。ポップスを基調としているから、なのでしょうか。

そんなこんなで、前置きが長くなりましたが楽曲と歌詞の両側面からこの「HIGH & LOW」という曲を見ていきたいと思います。

楽曲について

まず事前情報として、このアルバムは蔦谷好位置氏や田中潤(GENTOUKI)氏をはじめ、複数名プロデュース体制で作られたアルバムですが、
この楽曲は、堀込泰行氏本人によるプロデュースです。

一聴した感じ、まさに秋感満載なアコースティックなサウンド。ややディレイの効いたボーカルが合わさり浮遊感がプラスされています。

そしてなにより、個人的にハイライトだと思うのがサビ後のシンセ
ここはこの楽曲で欠かせない場所ではないでしょうか。

歌詞は後述で触れますが、「有り余った欲望の捌け口を求め彷徨う」主人公が、奈落へ落ちていく。そんな描写を明確に表したシンセのリフ。ニューウェーブの雰囲気も感じます。

しかしそんな世界観の楽曲なので、ミドルテンポで、ゆったりとしたコード進行のサウンドで構成されています。
個人的に、堀込泰行氏はキリンジ時代から、アップテンポな楽曲よりも、こういったダウナーな楽曲作成のほうが秀でているのではと思います。

極端にダウナーに割り振った楽曲といえば。
キリンジ時代のアルバム「DODECAGON」(’06)収録の「Lullaby」や、「3」(’00)収録の「むすんでひらいて」などは、
特に堀込泰行氏のダウナーの極地であり、これらを披露されたライブ(特に「むすんでひらいて」については’02ライブ)では、
その楽曲の持つエモさを、十分に満喫することが出来ると思います。

(試聴)「むすんでひらいて」

本来、先述の「むすんでひらいて」のようにアコースティックギターと最小限のバンド構成、コーラスワークだけでもこの楽曲は完成度の高いものとなっていたと思います。
しかしそこは、ダウナーでエモなポップスメイカーでもある堀込泰行氏。この多すぎない、主張しすぎないシンセの使い方こそ、彼のポップスセンスの賜物ではないでしょうか。と、思ったわけです。
(ちなみにその楽曲の深みを更に増しているのが彼の天性のボーカルなのですが長くなるので割愛します)
 
そしてこの楽曲に乗せられ更にダウナーにさせてくれるのが、以降書いていく歌詞となります。

歌詞について

歌詞は以下のページから見ることができます。

最初、この何度も何度も聴いても、この歌詞を汲み取れませんでした。
なんとなーく、「主人公がいて、彼は様々な欲望を抱えながら街を彷徨い、その欲望に飲み込まれていく…」
という雰囲気だけは分かったのですが、それが何を表しているのか。

主人公は、欲望の捌け口を探し続けていたのは、なぜ、どうして?

そこが腑に落ちないまま聴いていると、ある時、堀込泰行氏によるこのアルバムのインタビュー記事を見つけました。そしてなんと、そのインタビューではこの楽曲についても少しではありますが触れられています。

以下、一部引用します。

__泰行さん自身のプロデュース曲で面白いなと思ったのは「HIGH&LOW」で。都会だけど荒野のイメージが新鮮でした。
 
これはずっとやりそびれていた曲ではあるんですけど、今回ぜひ入れたいと思ってやったんです。歌詞のない状態から“HIGH&LOW”ってタイトルだけが決まっていて。最初はもっとひとりの人間の人生の絶頂期と転落を描きたかったんですけど、書いてるうちになんか違うかたちになってしまって、ひとりの男が都会の地の底を徘徊しているというか。でも、上を見ると…今の渋谷のすごい開発の仕方とか生きものみたいじゃないですか。重機とか。そのでかい都市計画の先にあるキラキラした未来に自分は行けるんだろうかっていう不安みたいなものを持っている。だけど、自分自身も自分のことを諦めてない感じのことを書きたかったんです。

“【堀込泰行 インタビュー】“世界は美しい”と言い切るのは危険 でも、誰しも美しい瞬間を感じることはできる | OKMusic” より

この時、感嘆符(!)を放ちました。
 
そうか。
これは、東京、特に渋谷みたいな大都会という人々の欲望が渦巻く街における、
自分との葛藤を唄った曲なんだと。
そうすれば、自分の中で、いろんな情景が描かれていきました。
 
「繰り返す 赤 青 黃」は、渋谷のスクランブル交差点、
覗き込んでいる「ディスプレイの向こう側」は、さながら優雅な芸能人の生活か何か?
証明の蠢く都市、鋼のダイナソーなんて、まさにパブリックイメージな都会そのもの。
 
 
と、この歌詞をだんだん理解していくにつれ、私はこの歌詞にとてつもない共感を覚えたのでした。
私事ですが、幸い、今年1年、東京方面へ遊びに行ったり研修に行くことがあり、その度に、東京や関東という街で、
自分の愛してやまない物事の、イベントなり、ライブなり、出会い、感謝の気持ち、その他etc…
それをほぼ1年間、感じ続けた1年でした。
 
この歌詞の主人公が、都会生まれ都会育ちの方なのか、地方で生まれ東京へ進出した方なのかは分かりませんが、
しかしこの「都会で感じる人々の欲望で形成されたエネルギー」は、誰しも感じ取れるものだと思います。
 
果たしてその人々の欲望の渦というのは時に牙となり私達の身に襲いかかります。
そのとき、私は、主人公は、奈落に落ちるのか。それとも、「光の方へ」向かうのか。
 
そんな行く宛の無い気持ちを表した歌詞では、ないでしょうか。
いやあ、着眼点が、ダウナー、ダウナー。
 
 
そんな、楽曲への感想でした。
当初この曲は楽曲先行で好きになっていったのですが、
上記のとおり歌詞を自分の中で汲み取れた瞬間、より一層、楽曲への愛が深まりました。
 
 
これからも聴き続けたいと思えるアーティストの1人、堀込泰行氏に感謝を込めて。

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